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グロースマインドセットとは?意味・育て方・AI時代に必要な理由

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グロースマインドセットとは?意味・育て方・AI時代に必要な理由

【執筆・編集】コラム編集チーム コンテンツ担当
企業の人材育成や組織づくりに役立つテーマを中心に、記事制作・情報発信を行っています。

グロースマインドセットとは、人の能力や知性は努力・学習・経験を通じて伸ばせるという考え方を指します。英語ではgrowth mindset、日本語では成長マインドセットとも呼ばれます。スタンフォード大学の心理学者キャロル・S・ドゥエック(Carol S. Dweck)が提唱した概念で、対になるのが、能力は生まれつき決まっているとするフィックストマインドセット(固定マインドセット)です。

AI時代に学び続ける姿勢はどう育つのか。人材育成や組織開発の現場でこの問いはますます重みを増しています。この記事では、定義や注目される背景にあるAI時代の文脈、マイクロソフトの組織変革事例、自分のタイプを確かめる簡易チェック、そして日常で育てる具体策まで、実践に使えるところまで掘り下げます。

グロースマインドセットとは何か

グロースマインドセットの核にあるのは、フィードバックや失敗を学びの素材として扱う態度です。能力は固定された資質ではなく、行動と時間の積み重ねで変わるものとして見る。ドゥエックがこの概念を広めた著書“マインドセット「やればできる!」の研究”は、教育現場から企業の人材開発まで世界中で参照されてきました。

ドゥエックの研究のおもしろいところは、子どもにパズルを解かせる実験にあります。難しい問題にぶつかったとき、“頭がいいね”とほめられた子どもは、その後の課題で簡単なものを選ぶようになった。一方で、“よく頑張ったね”と努力をほめられた子どもは、難しい課題に自分から手を伸ばしていく。能力をほめるか、努力をほめるか。どちらを受け取って育つかによって、困難な課題への向き合い方は大きく変わるのです。

ビジネスの文脈に置き換えると、成果や能力だけを評価するのではなく、挑戦の過程や試行錯誤にも目を向けることが重要になります。うまくいったかどうかだけでなく、何を学び、次にどう活かすのかが語られる環境では、人は新しい課題にも挑戦しやすくなります。

誤解されやすいのですが、成長マインドセットは“何でも前向きに捉えよう”という精神論ではありません。ドゥエック自身、後年のインタビューで、努力さえ賛美すれば成長するかのように誤解されたことを危惧していました。大切なのは、努力と戦略、フィードバックをセットで機能させる態度です。ただがむしゃらに頑張るのではなく、何が足りないのかを見極めて学習の方向を修正する。これが本来の姿です。

フィックストマインドセットとの違い

フィックストマインドセットとは、能力や才能は生まれ持ったもので変わらないとする考え方を指します。グロースマインドセットとの違いは、失敗・挑戦・他者の成功に対する反応にはっきりと現れます。

わかりやすい例は、プロジェクトが失敗したあとの様子です。フィックストマインドセット寄りの人ほど、失敗の原因を能力の欠如として受け止めるか、周囲や環境のせいにして片づけようとします。“自分にはこの仕事は向いていなかった”、“あの人のほうが才能がある”。こうした言葉で早々に幕を引こうとする。一方、成長マインドセット寄りの人は、同じ失敗を前にして、プロセスのどこに穴があったかを細かく拾い直す。次の挑戦に繋げるための材料として、失敗そのものを解剖していきます。

失敗を他人や環境のせいにしてしまう癖そのものについては、原因帰属(失敗や成功の原因をどこに求めるか)の観点から深掘りした記事もあります。

関連記事:【他責思考とは?口癖・原因・治し方を解説】

挑戦に対する反応

成長マインドセットの人は、まだできないことを面白がる感覚を持っています。難しい課題に向き合うとき、能力を試されているのではなく、能力を伸ばしている最中だと解釈する。つまり、学習の機会として扱うわけです。

一方で、能力を固定的に捉える人にとって、挑戦は自分の限界を晒すリスクに映ります。だから無難な選択に流れる。職場でいうと、新しい役割の打診を“自分にはまだ早い”と断ってしまう場面が近い。謙遜に見えて、実は自己評価の固定化が起きていることがあります。挑戦と快適さの関係については、コンフォートゾーンの抜け出し方と合わせて読むと理解が深まります。

関連記事:【コンフォートゾーンとは?抜け出す方法と心理学的な意味を例つきで解説】

フィードバックの受け取り方

成長マインドセットの人は、指摘を自分への攻撃ではなく、改善のための情報として受け取ります。耳の痛い内容でも、どこを直せば次はうまくいくかという手がかりとして拾い上げ、すぐに行動へ移していく。一方、能力を固定的に捉える人にとって、フィードバックは自分の能力そのものへの評価=ジャッジに映ります。だから、内容をかみ砕く前に反論の材料を探してしまう。この人は自分の事情を分かっていないと受け流したり、評価への不満に意識が向いたりする。同じ指摘でも、改善の材料として使うか、防御の対象にするかで、その後の成長は大きく分かれていきます。

他者の成功への視線

能力を固定的に捉える人ほど、同僚の成功は自分の相対的な地位を下げる脅威として映りやすい。成長マインドセットの人にとっては、同じ現象が学びの素材になります。“どうやってそこに到達したのか”を聞き出す会話と、“自分とは条件が違うから参考にならない”と片づける会話では、学習スピードが大きく変わります。

注目される背景にAI時代がある

成長マインドセットが近年あらためて注目される背景には、生成AIの台頭による仕事の再定義があります。これまで価値が高いとされてきたハードスキル、たとえば定型的な資料作成やコーディングの一部が、AIによって短時間で再現できる領域に入ったからです。

生成AIが議事録を要約し、コードの叩き台を数秒で吐き出すようになった今、あなたの職場でもこんな声が聞こえてきませんか。自分がこれまで磨いてきたスキルって、まだ武器になるのだろうか、若手のほうがAIを使いこなしていて焦る。漠然とした不安の正体を突きつめていくと、ひとつの問いにぶつかります。“AIによって仕事が変わり続ける時代でも、人は成長し続けることができるのか”。

AIツールの普及によって、これまで経験年数が優位性だった仕事でも状況が変わりつつあります。若手社員が生成AIを活用して短時間で提案書の初稿を作成したり、情報収集を効率化したりする場面は珍しくありません。その変化を脅威と捉える人もいれば、新たな役割へシフトする機会と捉える人もいます。

実際、AIが定型業務を担うようになるほど、人間にはAIが出来ない部分である顧客との関係構築や複雑な意思決定、課題の定義といった領域が求められるようになります。重要なのは、既存スキルが一部陳腐化することではなく、その変化にどう向き合うかです。

学び直しに前向きになれるかどうかで、差が開いていく。逆に、新しいツールとの付き合い方を学び直せると受け取れる人は、仕事の質を引き上げる余地を持ちます。ソフトスキル、なかでも学習姿勢そのものの価値が、ここに来て相対的に重くなってきました。

世界経済フォーラムが公表した“The Future of Jobs Report 2023”でも、今後数年で重要度が増すスキルとして、分析的思考、創造的思考、レジリエンスや柔軟性、生涯学習への意欲が上位に挙げられています。共通しているのは、新しい状況を前にしても学び続けられる構えです。これはまさに成長マインドセットが扱ってきた領域と重なります。

マイクロソフトに見る成長マインドセットの企業事例

成長マインドセットが組織変革の軸として使われた代表例が、マイクロソフトです。2014年にサティア・ナデラ(Satya Nadella)がCEOに就任した際、同社はすでにクラウド事業への出遅れや、部署間の縦割りによる停滞が指摘されていました。ナデラが打ち出したのは、製品戦略の刷新と並行して、企業文化そのものをフィックスト型からグロース型へ移し替えるという方針でした。

ナデラ自身が著書“Hit Refresh”のなかで、キャロル・ドゥエックの理論を社内研修や人材育成の中心に置いたことを明かしています。合言葉は“know-it-all(すべてを知っている)”ではなく“learn-it-all(すべてを学び続ける)”。自分の賢さを証明するために働くのではなく、毎日何かを学ぶために働く。この言葉は社内の評価制度や、マネージャーのフィードバック習慣にまで浸透していきました。

業績面の変化も数字に現れています。就任直後と比較して、マイクロソフトの時価総額は数年で大きく拡大し、クラウド事業Azureは主力のひとつへと成長しました。もちろん企業の業績は単一要因で語れるものではありません。ただ、ナデラの改革は、マインドセットと事業成長の関係の事例として注目されました。

日本企業でも、近年は人材育成の文脈で“成長マインドセット”を採用基準や評価項目に取り入れる動きが出ています。以前は、モチベーションや生産性を本人の性格や能力の問題として捉えることが一般的でした。しかし最近では、社員が学び続けられる環境や仕組みを組織としてどうつくるかに関心が集まっています。

あなたはどちら寄り?簡易自己チェック

グロースとフィックスト、自分がどちら寄りかは、普段の反応を振り返るとつかみやすくなります。完全にどちらか一方という人はほとんどいません。状況によって傾きが変わるのが普通なので、まずは自分はどう反応しがちかを眺めるところから始めてみてください。

1つ目は、難しい仕事を振られた時です。"面白そう、やってみたい"なのか、"なぜ自分に?失敗したら嫌だな"のどちらに近いでしょうか。前者が出やすいときは、挑戦を学ぶ機会としてとらえる見方が働いています。後者が先に立つときは、能力を固定的にとらえる見方のほうが前に出やすい状態です。

2つ目は、フィードバックを受けた直後の反応です。指摘された内容を思い返して、行動を変えられたでしょうか。それとも、受け止める前に、反論の材料を探していたでしょうか。指摘を行動に移すには、日々の小さな振り返りの習慣が効いてきます。

3つ目は、同僚が成果を上げた時に動く感情です。素直にどうやったのか知りたいと思えたでしょうか。それとも一瞬、運がよかっただけだろうと思ったでしょうか。嫉妬はごく自然な感情で、それ自体が悪いわけではありません。分かれ目は、そこから情報を取りにいく行動へ戻れるかどうかです。

なお、フィックスト寄りの答えが多くても、それで決まりというわけではありません。ドゥエックの研究が示したのは、マインドセットそのものが変えられるということでした。ここから、その育て方に入っていきます。

グロースマインドセットを育てる具体的な方法

成長マインドセットを育てるには、考え方を変えようとするより、行動や言葉遣いの習慣を変えるほうが近道です。思考は行動のあとからついてくる性質があります。

“まだ”を口ぐせにする

できない、わからない、という言葉の後ろに“まだ”を足す習慣は、ドゥエック本人がTEDトークで紹介した実践です。“この分野は得意じゃない”を“この分野はまだ得意じゃない”に変える。たった一語ですが、能力を固定的に捉える言い回しから、時間軸を含んだ言い回しに変わります。小さな工夫に見えて、こうした言葉の選び方が学習や挑戦を後押しする空気をつくることがあります。

結果ではなく過程にフィードバックする

“さすが、頭がいいね”より、“どういう順番で考えたのか、聞かせてほしい”のほうが、成長マインドセットを育てるには効きます。結果をほめると、結果が出ない場面を避けたくなる。過程に光を当てると、挑戦中の試行錯誤そのものが評価対象になります。

自分自身へのセルフトークでも同じです。うまくいった日に、運や才能ではなく、具体的にどの判断や行動が効いたかを振り返る。失敗した日には、何が足りなかったかを感情と切り離して見つめ直す。振り返りの質を積み上げていくと、挑戦への心理的ハードルが少しずつ下がります。

関連記事:【リフレクションとは?成果につながる基本と実践法】

小さな挑戦の機会を意図的に増やす

大きな変化を一度に起こそうとすると、人は防衛的になります。代わりに、普段の業務の中に、ほんの少しだけ背伸びの要素を混ぜ込む設計が効きます。会議の進行役を引き受ける、違う部門の人をランチに誘ってみる、読んだことのないジャンルの本を一冊だけ試す。失敗しても大きな影響のない挑戦を定期的に選ぶことで、挑戦そのものへの心理的なハードルが下がっていきます。

学習仲間を一人見つける

成長マインドセットの話をすると、個人の心の持ちように見えがちですが、実際には環境の影響が強い課題です。周囲にフィックスト型の言葉が飛び交う職場では、ひとりで成長マインドセットを保つのは消耗します。

対策として、学びを共有できる相手を見つける方法があります。同じ部署でなくてもかまいません。新しいツールを試した感想を交換できる相手、失敗談を笑って話せる相手がひとりいるだけで、挑戦や学習を前向きに続けやすくなります。企業が行う1on1やメンタリング制度を活用してもいいし、社外の勉強会で見つけてもいいと思います。

脳は変わるという知識を持っておく

脳の可塑性(かそせい)、つまり新しい経験や学習によって神経回路が変化し続ける性質は、近年の脳科学で広く確認されています。大人になってからも神経回路は変わり続けるという事実を知っているだけで、自分の成長に対する見方が少し違ってきます。歳だからもう遅い、と決めつける必要はないと思えるようになるからです。こうした知識は、行動を後押ししてくれます。

成長マインドセットを持つ人の特徴とメリット

成長マインドセットを持つ人には、共通する行動傾向があります。学習行動が安定して続く、指摘や批判を学習の材料として受け取れる、他者の成功にも素直な関心を向けられる。この三つが揃うと、個人と組織の両方にメリットが生まれます。

個人レベルでは、変化に対する耐性が上がります。異動や昇格、業界構造の変化など、能力が試される局面ですぐに諦めず学びながら対応しやすくなります。短期的な失敗で自己評価を下げすぎないので、切り替えて次の行動に移るスピードも速くなります。また、挑戦の機会が増えることで経験や学習の蓄積が進みやすくなります。

組織レベルでは、学び合う文化が育ちやすくなります。フィードバックを否定ではなく成長の機会として受け止められる組織では、上司から部下へだけでなく、メンバー同士でも意見や気づきを共有しやすくなります。その結果、改善が日常的に行われるようになり、組織全体の学習速度も高まっていきます。

ただし注意点もあります。成長マインドセットを評価軸に据えるとき、“前向きかどうか”だけを見てしまうと、疲弊したメンバーにさらに負荷をかける運用になりかねません。休むこと、立ち止まることも、広い意味での学習の一部です。成長を急かす文化にしない。運用側が気をつけるべきポイントはここにあると思います。

まとめ

グロースマインドセットは、能力は伸ばせるという前提に立って、学習・挑戦・フィードバックを扱う態度です。AI時代に入り、ハードスキルの一部が代替されていくなかで、学び直しを恐れない姿勢そのものの価値が相対的に重くなっています。マイクロソフトのように、企業文化の軸として採用する動きもあります。

自分のマインドセットは固定されたものではなく、言葉遣いや振り返りの習慣から少しずつ動かしていけるものです。“まだ”を足す小さな実践から、フィードバックを情報として受け取る姿勢、学習仲間を見つける環境づくりまで、打ち手は日常のなかに散らばっています。

成長マインドセットは、本人の意気込みだけでなく、振り返りを続けられる環境があってこそ根づいていきます。記事で触れたように、経験を学びに変える鍵は、結果そのものより過程に目を向ける振り返りの習慣にあります。

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