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レゴ®シリアスプレイ®研修とは?効果・進め方・費用・失敗しない導入法

レゴ®シリアスプレイ®研修とは?効果・進め方・費用・失敗しない導入法

レゴ®シリアスプレイ®(LSP)とは、レゴ®ブロックを使って参加者が自分の考えを立体的に組み立て、その作品を起点に対話を進める組織開発・人材育成のメソッドです。このメソッドを研修プログラムとして実施するのが、レゴ®シリアスプレイ®研修です。1996年にスイスのIMD(国際経営開発研究所)の教授ヨハン・ロースとバート・ヴィクターが、レゴ®社のCEOケル・キアク・クリスチャンセンとともに発案したのが原点で、その後ロバート・ラスムセン氏が再現可能なメソッドとして体系化しました。現在はGoogleやNASAをはじめ世界の名だたる企業が導入しています。略称はLSP(LEGO® SERIOUS PLAY®)と呼ばれ、ビジョン共有・チームビルディング・戦略策定・自己理解の場面で使われます。

この記事では、レゴ®シリアスプレイ®とは何かをわかりやすく解説しながら、効果や進め方、費用、そして導入を成功させるための勘どころまで踏み込みます。

会議で意見を求めても、特定の人だけが話して他は黙っている。せっかくのアイデア出しが、声の大きい人の意見で決着してしまう。半年かけてビジョンを言語化したのに、メンバーに聞くと誰も覚えていない。多くの組織が抱えるこの種のもどかしさは、頭で考えて口で話すというやり方だけに頼っている限り、なかなか解消できません。レゴ®シリアスプレイ®はここに別の入口を用意します。手を動かして組み立てるという行為が、ふだん言語化されないまま沈んでいる思考や感情を引き上げる。これがメソッドの中核にある仕掛けです。

レゴ®シリアスプレイ®研修とは何か

レゴ®シリアスプレイ®研修とは、参加者がお題に沿ってレゴ®ブロックで作品を組み立て、その作品についてストーリーを語り合うワークショップ型の研修プログラムです。LSPと略され、ビジョン共有、チームビルディング、戦略策定、自己理解、イノベーション創出など幅広いテーマで活用されています。

特徴的なのは、ブロックそのものに意味があるのではなく、参加者がブロックに込めたストーリーが価値を持つという考え方です。たとえば赤いブロックを乗せれば、ある人にとってはそれが情熱、別の人にとっては危険信号になる。同じ部品でも語る人によって意味がまったく異なる。この比喩を使った語りの構造が、ふだんの会議では出てこない深い対話を生みます。

LSPのコンセプト自体は、1996年にIMDのロース教授とヴィクター教授が戦略立案の新しい手法として生み出したものでした。これを数十回の試作を重ねて再現可能なメソッドへと磨き上げた中心人物が、ロバート・ラスムセン氏です。ロバート・ラスムセン氏は、1988年からレゴ®グループに所属し、LEGO® MINDSTORMS®など教育部門の責任者を務めてきた人物です。彼の経歴で意外と知られていないのは、15年以上にわたってマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボおよびタフツ大学の研究者と協働してきたという事実です。レゴ®シリアスプレイ®は長期にわたる学術的な共同研究を経て体系化された手法だと言えます。

手を動かすと、なぜ言葉が出てくるのか

手を動かして考えるという行為が思考を引き出す背景には、脳と手の密接な関係があります。人間の脳では、手や指の動きに関わる領域が広く使われており、手を使った作業は思考や発想にも影響を与えると考えられています。そのため手は、思考を外に引き出すための重要な役割を担っていると言えるでしょう。

レゴ®シリアスプレイ®の理論的支柱はふたつあります。

コンストラクショニズム

コンストラクショニズムは、MITメディアラボのシーモア・パパート教授が提唱した学習理論で、人は何かを外側に作り出すときに最も深く学ぶという考え方です。頭の中だけで考えるよりも、自分の外に物理的なモデルを作ったほうが、思考は構造化される。レゴ®ブロックという立体物に自分の考えを置き換える作業は、まさにこの理論の実装です。

フロー理論

もうひとつの柱は、心理学者ミハイ・チクセントミハイのフロー理論です。フローとは、課題に没頭して時間を忘れるほど集中している状態のことを指します。手元のブロックに集中している間、参加者は他人の評価やふだんの役職を一時的に忘れる。その状態が、ふだんは出てこない発想や本音を引き出す土壌になります。

LSP開発者のラスムセン氏自身、ブロックを組むことで脳の運動野・体性感覚野・記憶領域が同時に働き、考えが構造として立ち上がってくると説明しています。手を動かすから言葉が出るというのは比喩ではなく、脳の働き方に根ざしたアプローチなのです。

レゴ®シリアスプレイ®研修で得られる効果

レゴ®シリアスプレイ®研修の効果は、誰もが意見を出しやすくなること、チームビルディングの加速、ビジョンの共有、個人の内面の言語化に整理できます。会議で発言量が偏る組織や、価値観のすり合わせが進まないチームに対して、特に効きやすい手法です。

口頭の議論では、声の大きい人や役職が上の人の意見が通りやすい。多くの組織で起きている現象です。LSPでは、参加者全員が必ず作品を作り、必ず自分の作品について語るというルールが運用されます。話すか話さないかを選べないため、新人だろうとベテランだろうと、同じ時間と発言機会を持つことになる。発言機会が確保されるという変化は思った以上に大きく、ふだんは言葉にされない考えや感情まで表に出やすくなります。

LSPの活用事例としてしばしば語られるのが、NASAでの導入です。研究者とエンジニア間のコミュニケーション活性化を目的に使われ、短時間のワークショップで組織横断のチームが方向性を共有できたと紹介されることがあります。人材育成のメソッドの中で、これだけ"発言しない自由"を許さない設計を持つものは少ない、というのが私の理解です。

進め方とワークショップの実際の流れ

レゴ®シリアスプレイ®の進め方は、お題提示→個人での組み立て→作品の説明→対話→共有モデルの構築、というプロセスを繰り返す構造です。所要時間はテーマによって2〜3時間の短時間プログラムから、複数日にわたる戦略策定まで幅があります。

ファシリテーターがまずお題を出します。たとえば、あなたにとって理想のチームとは、というテーマだとします。参加者は数分から十数分、無言でレゴ®を組みます。重要なのは、考えてから組むのではなく、組みながら考えるという順序です。手が先に動いて、何を作っているか自分でも分からない時間がある。その混乱を抜けたところで、自分の作品の意味が見えてくるという体験が起きます。

組み終わったら、一人ずつ作品を見せながらストーリーを語ります。LSPには重要な原則があり、参加者は作品に込めた内容しか話してはいけないというルールが運用されます。"作品が全て"という言い方をすることもあります。作品の外側の解釈や一般論を語り始めると、せっかくの作品からの距離が遠くなり、深い対話が崩れるからです。

語った後、他の参加者は作品に対して質問を重ねます。なぜそのブロックの色を選んだのか、なぜこの位置に置いたのか。問いを重ねることで、本人も気づいていなかった意味が表に出てくる。ここで起きているのは、自分の作品を通して自分自身を発見するプロセスです。

最後に、複数人の作品を組み合わせて共有モデルを作るフェーズに進みます。全員のビジョンや価値観をひとつの大きな作品に統合する。完成したモデルを壁に飾り、その後の意思決定の基準として参照され続けるという運用も良いでしょう。

レゴ®シリアスプレイ®研修の費用相場

レゴ®シリアスプレイ®研修の費用相場は、半日〜1日のワークショップ形式で参加者一人あたり数万円程度、企業全体での導入になると数十万円〜数百万円という幅です。

また、ファシリテーターの経験値によって費用に差が出ることがあります。LSPはブロックがあれば成立するメソッドではなく、参加者の発言を引き出し、深い問いを返せるかどうかでアウトプットの質が大きく変わります。

進行が浅いと、対話が深まらないまま、”楽しかった”で終わってしまうこともあります。料金表だけで比較するのではなく、事前打ち合わせの有無や設計力まで含めて見ることが重要です。

社内でファシリテーターを内製化したい場合、認定ファシリテーター養成トレーニングを受講する必要があります。費用や習得までの負荷は決して小さくなく、実際には外部ファシリテーターを活用する企業も少なくありません。

認定ファシリテーターと内製化の判断軸

認定ファシリテーターとは、所定の養成トレーニングを修了し、LSPメソッドを正式に運用できる人材のことです。こうした養成は国内でも受講でき、いわゆる民間資格に位置づけられます。

内製化と外部委託の判断は、年に何回LSPを実施するかが目安になります。年に1〜2回ならば、外部の認定ファシリテーターに委託したほうが、養成費用とリードタイムを考えても合理的です。組織開発のコアな手法として年に何度も行うのであれば、社内で養成しておくのも良いかと思います。

ただし、トレーニングを修了したからといって、すぐに優秀なファシリテーターになれるわけではないので、トレーニング修了後も、最低十数回の場数を踏むまでは外部のメンタリングを受ける、くらいの設計をしておくのが現実的だと思います。

オープンソース化が変えたこと

LSPは2010年にレゴ®グループの判断でオープンソース化され、クリエイティブ・コモンズライセンスのもとで世界中の誰もが活用できる手法になりました。それ以前はレゴ®グループ直系のライセンスパートナーのみが提供できたのです。この変化はLSP普及の決定的な転換点です。

オープンソース化以降、Association of Master Trainers、Serious Play Pro、Global Federation of LSP Master Trainersといった国際的なコミュニティが立ち上がり、業種別の応用事例や教材が共有されるようになりました。教育、医療、行政、スタートアップの戦略策定、メンタルヘルス領域まで、もとは戦略立案ツールだったメソッドが想定外の領域に広がっています。イノベーション領域での活用事例が増えました。

失敗しやすいパターンと回避策

LSP研修は手法として完成度が高い一方で、導入の仕方を間違えるとブロック遊びで終わるという失敗が起きます。ここでは、失敗の共通したパターンを見ていきたいと思います。

目的設定が曖昧なまま実施する

何のために実施するのかが曖昧なまま、面白そうだから、という動機で導入するパターンです。LSPは万能ではなく、ビジョン共有、チームの相互理解、個人の内省といった目的に強みを持つ手法です。一方、業務スキルの定着や知識のインプットには向きません。事前に得たい変化を言語化しておかないと、参加者にとって何だったのかよく分からない時間になります。

経営層の関与なしに実施する

ビジョン共有や戦略策定の用途で導入する場合、経営層が同じ場でブロックを組まないと、現場で生まれた共有モデルが意思決定に反映されません。"現場が盛り上がっただけ"で終わる例です。経営層を説得しきれない場合は、まず経営層向けの体験ワークショップから始めるのが現実的な順番だと考えます。

ファシリテーターの力量を見極めない

LSPの成否はある程度ファシリテーターに依存します。信頼でき、実績のあるファシリテーターに依頼すること。これだけでも失敗確率はだいぶ下がります。

他のチームビルディング研修との違い

LSPと他のチームビルディング研修との違いは、参加者全員が等しく発言する構造、扱えるテーマの広さ、そしてアウトプットが立体物として残る点にあります。

ロールプレイやディスカッション主体の研修では、どうしても話すのが得意な人に発言が偏りやすくなります。アウトドア型のチームビルディングは関係性づくりには有効ですが、価値観やビジョンのような抽象的なテーマを深く扱うには限界があります。LSPは、誰もが同じスタートラインで発言でき、しかも抽象的なテーマを具体物に落として議論できるという点で独自のポジションを持っています。

ただし、あらゆる場面で最適というわけではありません。短時間で論点を絞って結論を出したい会議には不向きで、正しい手順を効率よく共有したいといった目的にも合いません。LSPに向くのは、ふだんの会議では言語化されない情報を表に出したい場面、と整理しておくと選択ミスを防げます。

よくある質問

オンラインでも実施できるのか

オンライン実施は可能ですが、対面に比べると体験の質はどうしても落ちます。作品を物理的に並べて共有モデルを作る工程は、画面越しではどうしても希薄になる。地理的に分散したチームで、対面実施が現実的でない場合は、参加者全員にキットを事前送付してオンラインで実施する形を取る必要があります。

1回のワークショップに何人まで参加できるか

ファシリテーター1人につき、8〜10人が目安です。これを超えると、一人ひとりの作品への問いかけが浅くなり、深い対話が成立しにくくなります。20〜30人規模で実施したい場合は、ファシリテーターを複数立て、テーブルごとにブレイクアウトする運用が現実的です。

まとめ

レゴ®シリアスプレイ®は、ブロックという媒介を通じて参加者の思考と感情を引き出し、対話の質を底上げする手法です。手と脳の深い結びつきという神経科学的な裏づけ、コンストラクショニズムとフロー理論という学習理論、そして開発者ラスムセン氏のMITメディアラボとの長年の協働が背景にあります。短時間で関係性が深まり、ふだんの会議では出てこない発言が引き出されるという効果は、導入企業の多くが体感しているところです。

ただし、目的設定とファシリテーターの選定を誤ると、ただのブロック遊びになります。導入を検討する場合、自社が抱えるテーマがLSPに向くのか、外部委託と内製化のどちらが合理的か、まず整理しておくことを勧めます。

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