YWT振り返りとは|KPTとの違い・やり方・チーム導入のコツ
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YWTとは、やったこと(Y)、わかったこと(W)、次にやること(T)の頭文字を取った日本発の振り返りフレームワークです。日本能率協会コンサルティング(JMAC)が1990年代に開発したKI活動の中で生まれた手法で、業務やプロジェクトの経験から学びを引き出し、次の行動につなげる目的で使われます。KPTと並ぶ代表的なチーム振り返り手法ですが、扱う対象や思考の流れが異なります。この記事では、YWTの意味、KPTとの違い、進め方、メリット・デメリット、チーム導入のコツまでを通して整理します。

YWTとは何か|Y・W・Tそれぞれの意味
YWTは、やったこと(Y)、わかったこと(W)、次にやること(T)という3つの問いに沿って経験を振り返るフレームワークです。事実を起点にして気づきを引き出し、行動に落とすという流れが組み込まれているため、個人の学びにもチームの改善にも使えます。
Yの"やったこと"は、期間内に実際に取り組んだ事実を書き出す部分です。商談に何件行った、資料を3本作った、新人のフォローに2時間使った、という具合に、評価や感想を入れずに事実だけを並べます。ここを丁寧にやるかどうかで、後の気づきの深さが変わります。事実が薄いと、わかったことも薄くなります。
Wの"わかったこと"は、Yで書いた事実から学びや気づきを抽出するパートです。商談の反応がよかった理由、資料作成で時間を取られた原因、新人がつまずいたポイント。事実を眺めていると、自分の中で言語化できていなかった感覚が浮かび上がってくることがあります。"わかった"には、できるようになったことだけでなく、できなかったことやうまくいかなかった理由も含めて記録します。
Tの"次にやること"は、Wで得た気づきを具体的なアクションに変換する場所です。来週の商談では冒頭の挨拶を変える。資料はテンプレートから作る。新人に対して朝の10分を必ず確保する。などです。実行できる細かさまで落とすのが要点です。"頑張る"や"意識する"といった抽象的な決意で終わらせると、翌週も同じTが書かれることになります。
YWTは国産のフレームワークです。海外発のフレームワークが中心の振り返り手法の中で、日本の現場で生まれ、日本語の問いとして自然に響くという特徴があります。
YWTとKPTの違い|どちらをいつ使うか
YWTとKPTの最大の違いは、振り返りの起点が"事実"か"評価"かという点にあります。YWTはやったことという事実から始まり、そこから学びと次の行動を導きます。KPTは、Keep(続けること)、Problem(問題点)、Try(次に試すこと)の3要素で、良し悪しを判断するところから入ります。
この違いは、見た目以上に思考の方向を左右します。KPTは課題発見と問題解決に強い手法です。Problemを洗い出してTryで対策を打つ流れがはっきりしているので、業務改善や開発プロセスの見直しに使いやすい。アジャイル開発の現場でKPTが選ばれるのも、不具合や障害という"問題"を扱う前提があるからでしょう。
関連記事:【KPTとは?振り返りの書き方・進め方・形骸化を防ぐコツ】
YWTは、まだ何が問題か明確になっていない経験や、新しく始めた取り組みの整理に向きます。新規事業の最初の3か月、新人の最初の業務、初めて担当したプロジェクト。こういう場面でいきなりProblemを並べると、本人がただ責められているような感覚になる人が出てきます。やったことから順に積み上げて、その中から学びを取り出すYWTのほうが、落ち着いて振り返りができる場面が多いと感じます。
YWTとKPTの使い分け基準
起点・思考の流れ・向いている場面で整理すると、使い分けの基準は次のようになります。
観点 | YWT | KPT |
|---|---|---|
起点 | 事実(やったこと) | 評価(良し悪し) |
思考の流れ | 事実 → 学び → 行動 | 現状評価 → 問題 → 対策 |
得意なこと | 経験の整理・学びの抽出 | 課題発見・問題解決 |
向いている場面 | 新しい取り組み、個人の成長記録 | 業務プロセス改善、チームの課題解決 |
代表的な利用シーン | 新規事業の初期、新人の振り返り | アジャイル開発、定例の業務改善 |
両方を併用しているチームもあると思います。月次の大きな振り返りはKPTで業務改善のテーマを扱い、週次の小さな振り返りはYWTで個々の学びを共有する、というやり方です。目的が違えば手法も使い分ける。1つに固執しなくてよい、という前提を持つだけで、振り返りの質はぐっと上がります。
関連記事:【振り返りフレームワーク9選|目的別の選び方と使い分けを解説】
YWTのメリットとデメリット
YWTのメリットは、事実起点で心理的な負荷が低いこと、学びを記録として残しやすいこと、次の行動に直接つながりやすいことです。一方デメリットは、運用が緩いと"やったことの羅列"で終わりやすい点、Wを引き出すファシリテーションに技量が要る点になります。
事実から始まる構造には、人を萎縮させにくいという効用があります。Problemを書けと言われると、自分のミスや弱点を晒すような感覚が先に立つ。やったことを書けと言われたら、まずは手を動かした事実を素直に並べられます。新人が振り返りに参加するとき、この入口の低さは効きます。
ただ、Wを深く取れないとYWTは形骸化します。"いろいろあった"や"勉強になった"で終わると、Tも"これからも頑張る"になる。これだとやる意味がほとんどありません。Wを引き出すには、Yで書かれた事実に対して"なぜそうなったか"、"他にどう動けたか"という質問をぶつける役回りが要ります。
YWTの進め方とテンプレート
YWTの基本的な進め方は、Y、W、Tの順に書き出し、共有し、Tを実行に移すという流れです。個人で行う場合は1人で書いて読み返す。チームで行う場合は各自が書いた内容を共有し、議論を経てTを決めます。
期間設定は、対象に応じて変えます。週次なら直近1週間、月次なら直近1か月、プロジェクト単位ならその案件全体。週次は事実の確認とすぐ打てる手を見つける場、月次は学びの抽出、四半期はチームとしての方向性の更新、と役割を分けるのも良いでしょう。
テンプレートは、A4一枚に3列で十分です。左にY、真ん中にW、右にT。罫線も最小限でいい。凝った様式を作ると、書くこと自体が面倒になって続きません。デジタルでやるなら共有ドキュメントに同じ3列を作るだけで足ります。
言葉だけではイメージしづらいので、営業担当者の週次YWTを例に挙げます。
やったこと(Y) | わかったこと(W) | 次にやること(T) |
|---|---|---|
新規顧客への商談に5件訪問した | 冒頭で相手の課題を質問した回ほど、反応がよかった | 来週の商談は冒頭5分を必ず質問の時間に充てる |
提案資料を3本作成した | ゼロから作ると1本2時間、テンプレ流用だと45分で済んだ | 資料は既存テンプレートから作り、ゼロからの新規作成はやめる |
新人の同行フォローに2時間使った | 新人は価格説明のパートで毎回つまずいていた | 水曜に価格説明のロールプレイを30分実施する |
ポイントは、Yの事実から"なぜそうなったか"をWで言語化し、それを実行できる粒度のTまで落としていることです。"もっと頑張る"ではなく、"冒頭5分を質問に充てる"まで具体化すると、翌週そのまま実行できます。
また、下記の記事からテンプレートをダウンロードできます。
関連記事:【振り返りシートの書き方と活用法|テンプレートと例文でわかる実践方法】
個人で使うときの書き方
個人YWTは、毎日5分でも回せます。1日の終わりに、その日やったこと、わかったこと、明日やることを書く。手帳の片隅でも、スマホのメモでも、続けやすい場所に置くのが要点です。
書きためた記録を月末にまとめて読み返す時間を取ると、気づきの蓄積が見えます。同じWが何度も出てくるなら、それは構造的な課題です。Tが毎回違うのに進捗が出ていないなら、Tに具体性がないサインだと考えてください。
チームで使うときの進め方
チームYWTは、ファシリテーターを置くと回りやすくなります。各自が事前にYWTを書いてきて、会の冒頭でYだけを順に共有する。次にWを一人ずつ話し、メンバーから質問を受ける。最後にTを宣言する。
注意したいのは、他人のWに対して評価や反論をしないというルールを最初に置くことです。"それは違う"、"もっとこう考えるべき"という言葉が出ると、次回から本音のWが出てきません。質問はしてもよいが評価はしない、という線引きを最初の数回はファシリテーターが意識的に守ります。
YWT導入で失敗しないための観点
YWTの導入で失敗しないためには、目的の明示、テーマの絞り込み、継続の仕組みという観点を押さえる必要があります。これらが欠けると、形だけの振り返りに変わって、いつの間にかやらなくなってしまいます。
目的の明示は、なぜYWTをやるのかをチームの言葉で共有することです。学びを蓄積したいのか、新人の立ち上がりを早めたいのか、メンバー同士の業務理解を深めたいのか。目的が曖昧だと、参加者は"上から言われたからやる"という姿勢になります。私の印象では、これがいちばん早く形骸化するパターンでした。
テーマの絞り込みは、毎回の振り返りで扱う範囲を具体的に決めることです。"今週全般"だと話が散ります。"今週の顧客対応"、"今週の新規開発"のようにテーマを1つに絞ると、Yの事実も鮮明になり、Wが深くなります。私の経験でも、テーマを絞ったほうがYWTは確実に機能しました。
継続の仕組みは、振り返りを業務時間に組み込んでしまうことです。終業後にやろうとすると、忙しい週から崩れます。週次なら金曜の最後の30分、月次なら月初の月曜午前、というように就業時間内に固定枠を取る。これだけで継続率がはっきり変わります。
YWTとメタ認知|自分の思考を観察する訓練として
YWTは、メタ認知(自分の思考や行動を一段上から眺める力)を鍛える訓練としても機能します。Yで自分のやったことを書く、Wで自分が何に気づいたかを言葉にする、Tで自分の次の動きを宣言する。この一連の動作は、自分の頭の中で起きていることを外に出して観察するプロセスそのものです。
メタ認知が育ってくると、振り返りの問いが日常の業務の中で自然に働くようになります。たとえばミーティングの最中に「いま相手の反応が変わったのはなぜか」とその場で気づき、次の一手をすぐ調整できる。本来は終わってからWに書くはずだった気づきが、行動しているそのときに分かってくるのです。こうして会議の場だけで使う手法が、日々の判断を一段上から見直す習慣に変わります。
関連記事:【メタ認知とは?高い人の特徴と能力を鍛える具体的な方法】
YWTを定着させるためのチームリーダーの役割
YWTを定着させる鍵を握るのは、チームリーダーがWの質に責任を持てるかどうかです。Yを書かせるのは仕組みでできますが、Wを深く取るには問いの質が要ります。リーダーが最初の数か月、Wに対して質の高い質問を投げる役を担うかどうかで、チームの様子が決まります。
質の高い問いとは、たとえば次のようなものです。「その商談がうまくいったのは、相手の何が変わったからですか」、「同じ状況がもう一度来たら、最初に何を変えますか」、「うまくいかなかったのは準備の問題ですか、当日の進め方の問題ですか」など。事実(Y)に対して原因と再現性を問い直す質問を重ねると、「勉強になった」で止まっていたWが、次に使える学びに変わります。逆にリーダーが「で、次どうする?」とTだけを急かすと、Wが浅いままTだけが空回りします。
まとめ|YWTで振り返りを習慣にする
YWTは、やったこと、わかったこと、次にやることという事実起点の3要素で振り返るフレームワークです。KPTが課題解決に強いのに対し、YWTは経験の整理と学びの抽出に強い。新しい取り組みや個人の成長記録、心理的な負荷を抑えたい場面で力を発揮します。導入の鍵は、Wを深く取るための問いの質と、業務時間に組み込む継続の仕組みです。
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よくある質問
Q. YWTとは何ですか?
A. やったこと(Y)、わかったこと(W)、次にやること(T)の3つで経験を振り返る、日本発のフレームワークです。事実を起点に学びを引き出し、次の行動につなげます。
Q. YWTとKPTはどちらを使えばいいですか?
A. まだ何が問題か見えていない新しい取り組みや個人の成長記録にはYWT、問題点が明確で業務改善を進めたい場面にはKPTが向きます。月次はKPT、週次はYWTと併用するという考えもあります。
Q. どのくらいの頻度でやればいいですか?
A. 週次・月次・プロジェクト単位など対象に応じて変えます。週次は事実確認とすぐ打てる手の発見、月次は学びの抽出、と役割を分けるなどとすると効果的です。
Q. YWTが形骸化するのはなぜですか?
A. Wが「勉強になった」で止まり、Tが「これからも頑張る」で終わるためです。事実への問いかけでWを深掘りし、Tを実行できる粒度まで具体化することで防げます。

